推薦図書

 

■話題の児童文庫『ステララマリスと翼の少女』 あさぎ清歌著
(幻冬舎ルネッサンス) 1,200円+税
                             

■著者紹介        日本児童文芸家協会会員
AFF(フランス フェーヴコレクター協会)会員
     2010-4-25 出版

東北地方太平洋沖地震が発生し、原発事故が起きたのは、2011.3.11でした。

   ※ 原発事故の 約1年前に書かれた本です。

( 内 容 紹 介 )

起こるはずのない原子炉の事故により、世界は放射能で包まれた暗黒の世界となった近未来。
赤い河、見渡す限りの砂漠、有毒の風、灰色の空、荒廃した街、デジタル図鑑でしか見る事のできない植物たち。

諦めの世界で生まれ育った少年“僕”は、ステラ・マリス(地球)から白い羽をもらった不思議な少女と出会う。
少女が話してくれた世界では、空は青く、海は深く、ジャングルは緑だったと聞く。

少年は世界の話を聞き、「どうして誰も守らなかったのだろう」と悲しみの声を発する。
人間はなぜ環境破壊をおこしてしまったのか。

子どもたちの心に環境破壊のなぜを呈するファンタジー児童文学。


かって、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(1962年)という本が多くの人々の心を捉えた事があります。
DDTをはじめとする、農薬等の化学物質の危険性を、鳥が鳴かなくなった春という出来事を通し訴えた作品です。

それまであまり知られていなかったDDT の残留性や生態系への影響を公にし、社会的に大きな影響を与え、
環境問題の告発という大きな役割を果たし、環境運動の原動力となりました。

日本版の『沈黙の春』と言われた有吉佐和子の『複合汚染』(1975年)も、多くの人の心を捉えました。

しかし、『沈黙の春』が出版されて50年を過ぎたにも拘らず、
恐ろしい環境汚染の実態を知った今でも、人々は「有効な手段」が打てないままでいます。 何故でしょうか?…


“食育”とは新語ではなく、
1898年(明治31年)には、石塚左玄が『通俗食物養生法』の中で
「今日、学童を持つ人は、体育も才育も、全て食育にあると認識すべき」と表現しています。

1990年代後半には、
“食”は健康の源であり、体に必要で安全な物を選んで食べていく事は、
生命の在り方に直結するという認識が高まってきました。

1990年代後半の日本で、こうした食意識の転換があった要因として、
  家庭での食事が健全な形を維持できなくなってきた状況、
  軽食の増加などにより学童の咀嚼回数が著しく低下したこと、
  若年層の血糖値の高数値化と糖尿病予備軍かとも言える状況、
  そして、これらを招いた日本の食生活の問題が社会的に認識されるようになりました。

しかし、なかなか家庭での“食育”が進みません。… 何故、でしょうか?


“食育”に力を入れている保育園の話ですが、次のような事があったそうです。
保育園児が、自宅で食事を食べなくなったというのです。

保育園では玄米菜食が中心の食事を食べさせていて、
その美味しさを体で知った園児は、家庭で出される白米を中心とした食事を受け付けなくなったというのです。

そこで母親が、保育園で出されているような玄米菜食を作ると、
美味しいと言って、以前のように沢山食べるようになったという事でした。


⇒※これらの事から分かるのは、環境問題などを含め、
  あらゆる問題は「大人の心を変えるよりも、“純粋な子供の心を正しく教育して変えていく”方が賢明である」という事です。

書物は、人々の心の中に少しずつ真実を伝える力を持っています。

『沈黙の春』や『複合汚染』が、大人の心に真実を伝えた以上に、
『ステラマリスと翼の少女』は、子供の心に環境への関心を育ててくれる力を持っているように思います。


本の最後の「でも、今の僕には守らなくちゃならないものが、たった一つだけある。
本当にちっぽけな、育つとどんなものになるのかもわからない、本当に育つのかさえ疑わしい芽が一つ。
… 僕は、遅過ぎた祈りと共に、奈落の壺の最後の封印を解こう。
そして僕は、僕らしくもなく信じている。
罪に汚れた土地にも、いつか花が咲くことを。」との文面に、心が救われた気がします。


『沈黙の春』や『複合汚染』の児童版とも呼べる『ステラマリスと翼の少女』は、
大人にも“是非読んで頂きたい一冊”です。

子供の頃の読書と現在の生活や意識がどう関係しているかの調査で、
明らかに、小学校就学前から中学校までの頃に、
絵本や本を読んだり、読み聞かせを受けたりした読書活動が、
大人になってからの行動に“大きな影響を及ぼしている”と解ります。

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